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今夜も工房へ入り浸り、灰釉に酸化銅を加えて深い緑色をだす。何度も試行錯誤し、思い描く深く暗く濃い河童色に仕上げていく。
ようやく満足いくものが出来た。これで良い。これが……良い!
深く暗く濃い緑。
そして、あの河童からもらった液体をかけようと瓶を持つ。
……でも、本当にかけても?
せっかく、このままでも良く出来たものに? かけて変にならないのか?
不安に思うが依頼主の要望だ。
意を決して綺麗に出来上がった皿の表面に流すようにかける。
ドロリとした液体は蠢くように皿の上ではじかれ、ひとつひとつが水玉の様になったかと思うと、スウーと消えた。
「え?」
何も変わらないままの皿。あの液体、なんだったんだ?
しばらく皿を眺めていると、滲むように深く暗く濃い色に黒味を足した味のある色合いになった。
……なっ! なんだ、こ、これ! この釉薬! この色合い!
凄い。今まで生きてきて初めて見た!
こんな色の皿、きっとこの世にはない。
発表すれば……。
ああ。俺は陶芸の世界に名を残せる。
父よりも、有名に。
そうだ、またあの河童に液体をもらって。発表しよう。
河童釉薬って名づけて!
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