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あの土手へと向かう。草より一層濃い緑の生き物が体育座りして待っている。
「やあ、お待たせ!」
俺は意気揚々と軽く駆け寄り隣に座り込む。
「きたきたあ」
今日は特別機嫌が良さそうだ、可愛らしく微笑んでいる。それがわかる。
それくらい俺たちは打ち解けている。
紙袋から深く暗い濃い黒い緑の皿を一枚取り出して河童へ見せる。
「ああ、いいねえいいねえ」両手の水かきをパチンパチンと合わせて喜んでいる。
可愛い! 認めてくれるか? 俺を。
そうだろう! 人生で1番の出来だ。
おまえの身体に似た緑。愛さえ感じ皿をひとなでする。
「それを、キミの頭の上にのせてみせてよ」
「おう! まかせろ」不思議に思ったが、俺は言われるまま皿を頭にのせてみた。
その途端、ジワーっと頭と皿の間からドロリした液体が染み出してきて俺を包んでいく。服も溶けていく。手を動かすとボトリという音と共に濃い緑色の粘液みたいなものがおちた。
河童にもらったあの液体と同じような……どういう事だ? 何が? 起こっているんだ。
俺の手には水かきが出来ている。
肌がさっき自分が作ったお皿と同じ色に染まっていく……。
どんどん、どんどん。
深く。
どんどん、どんどん。
暗く。
どんどん、どんどん。
濃く。
どんどん、どんどん。
黒く。
「うわああ!」
驚いて口を押えようとしたら、固い嘴の感触がした。感情が薄れていく。今置かれている状況が急激にぼやけてくる。
「ああ、吃驚したあ」
と、自分の声がくぐもって聞こえてきた。
「さあ、いこうか」
水かきの手を出されて自分の水かきの手を出す。そのまま手をひかれて、大きな川の流れにツルンと滑り込んだ。
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