1/4
前へ
/16ページ
次へ

 名刺には電話番号さえ書かれていなかった。QRコードで画像SNSのアカウントにアクセスして、女が投稿している画像(俺はこの手のデバイスに上がっているものは写真とは呼ばない)を見た。俺の無様な姿が既に掲載されているかを確かめたかった。  幸い、俺の間抜け面はスクロールしても登場しなかったが、多くのセルフィー、所謂「自撮り」が掲載されていた。どれもキムラリコと誰かが一緒にフレームに収まっている画像で、動きがあり、ドキュメントとしては面白そうなものではあった。  被写体は労務者風の男や俺のような業界に居そうな野球帽をかぶった黒縁眼鏡の男、ホームレスと思われる老人、ラーメン屋の煩そうな親父と様々だった。ヤクザ風の派手なスーツの男もいた。女性はライブ会場に来ていると思しき若者、パーティードレスを着た化粧の濃い水商売風、小学校の校門が背後に映り込んだ老婆とこれも様々だ。外国人も、白人、黒人、アジア系の男女と共に映っているものがあった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加