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 六月ジューンという、ストリップの舞台にも立っているピンク映画女優だった。名前は勿論本名ではなく、六月生まれだからという安易な理由で事務所が付けた名前だ。昔はAVを主にやっていて、当時は黒髪ストレートの清純派で売っていたが、ベテラン(この業界では二年もすればベテランだ)になった今はほぼ金髪に近い髪色に濃いメイクの、「ジューン姐さん」として活動している。芝居勘が良くピンクの現場では助演として重宝されていて、俺も何度も現場に付いた事があった。ジューンなら連絡先が分かる。俺は電話をかけた。 「ジューン、今、大丈夫か?」 「あれ後藤ちゃん。どうしたの。アフレコって何時だっけ?」  漏れ聴こえてくる音から、ストリップ劇場の楽屋に居るのが分かった。 「アフレコは来週だよ。池さんが押しちまってリスケになった。ちょっといいか?」 「なに?改まって」  ガムを噛んでいるのか、くちゃくちゃという音が、酒焼けの声に交じって聴こえてくる。 「お前、キムラリコって知ってるか?カメラマンらしいが」
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