これが最後のさようなら

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突然の手紙に驚いているだろうか。

ネットできみの名前を探しても見つからなかった。
珍しい苗字なのに。
とっくに名前が変わった証拠なのだろうけど。
共通の友達もいなくて、思いついたのがきみの大学だった。
学生課に行って住所を聞いても教えてもらえなかった。
当たり前だよね。
だけどどうしても伝えたいことがあるからと何回か通って、実直そうな担当の彼に登録してある住所に届けてくれと頼み込んだんだ。
もし本当に彼が届けてくれていたら、僕の勢いに負けて引き受けてしまった彼を非難しないで欲しい。
すべては僕の責任だ。

きみに振られてから30年。
元気にしていますか？
僕はあの後しばらくしてから会社の同僚とお付き合いして、結婚したよ。
子供が2人。
上の子は昨年成人した。

ずっと探していたわけじゃない。
忘れようとしていたし、忘れたつもりだった。
別れた半年後に、1度会ったことがあったよね。
きみが誘いに乗ってくれたことに復縁を期待したけれど、近況を話してすぐに帰ってしまった。
その後諦められなくて送った手紙に返事が無かったことで、完全に吹っ切れたと思ってた。

僕が19、きみが18歳で知り合って、お互いすべてが初めてだったね。
優しいきみに夢中だったし、大切にしていたんだよ。
いずれ結婚するだろうと思っていた。
だから僕が先に社会人になって余裕がなくても許してもらえると思っていた。
許すのが当然だと思い上がっていたんだ。
新しい仲間との約束を優先しても仕方が無いよねと。
きみが就活で悩んでいても、僕だって苦労したんだから自分で頑張れよとしか言ってなかったね。
今なら話を聞くだけできみの助けになれたとわかるのに。

人生も半分を過ぎて、子供も大きくなって、きみの事ばかり考えるようになった。
きみと結婚していたら、どんな感じだったかなと。
忘れようと心の隅に閉じ込めたのに、心の隅で後悔ばかりしていたことに気が付いた。

1度会ってもらえないだろうか。

今さらどうこうなりたいわけじゃない。
妻には感謝しているし、子供は大事だ。
ただ、こんな風に伝えることになるのなら、誰とも結婚してなかった方がよかったかなとも思う。

すでに亡くなっているとは思いたくない。
結婚はしているだろうね。

このまま、もう会えないまま一生を終えるのは嫌なんだ。

迷惑なのは承知でのお願いです。
こんなふうに追いかけてしまって申し訳ない。
会ってもらえるなら同封の名刺に書いた番号に連絡して下さい。