1.小泉八雲朗読のしらべ〜へるん先生傑作選〜編(2023.04.23)

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 誰とも示し合わせることもなく来てしまい(というか示し合わせる相手がいない)、そわそわしていると、隣に並んでいる人も同じように、誰とも話していなかった。  私は耐え兼ねて、その人に声をかけてしまった。 「BOWWOWのファンの方ですか?」  すっごい保険を張って。  すると、 「あ、いえ、私は、佐野さんの」 「あっ! そうなんですね! 実は私もなんですよ!」  つい嬉しくなって声を上げると、その方は私に、こんなことを言うのだ。 「あの……もしかして、小説とか書かれてる方ですか?」 「え」 「その携帯、Twitterで見かけたので」 「あ……はあ」 「ツリーで下がってたの、佐野さんのエッセイでしたよね? あれ読みました!」 「はは……いやはや、お恥ずかしい……」  相手は恐らく、私よりも十から二十上だろうか、といったところ。  こんなことあるのかと。しかもほんとに、ちゃんと読まれている。  恐ろしいことである。読まれたくて上げているのに、恐ろしいことである。
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