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誰とも示し合わせることもなく来てしまい(というか示し合わせる相手がいない)、そわそわしていると、隣に並んでいる人も同じように、誰とも話していなかった。
私は耐え兼ねて、その人に声をかけてしまった。
「BOWWOWのファンの方ですか?」
すっごい保険を張って。
すると、
「あ、いえ、私は、佐野さんの」
「あっ! そうなんですね! 実は私もなんですよ!」
つい嬉しくなって声を上げると、その方は私に、こんなことを言うのだ。
「あの……もしかして、小説とか書かれてる方ですか?」
「え」
「その携帯、Twitterで見かけたので」
「あ……はあ」
「ツリーで下がってたの、佐野さんのエッセイでしたよね? あれ読みました!」
「はは……いやはや、お恥ずかしい……」
相手は恐らく、私よりも十から二十上だろうか、といったところ。
こんなことあるのかと。しかもほんとに、ちゃんと読まれている。
恐ろしいことである。読まれたくて上げているのに、恐ろしいことである。
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