1.小泉八雲朗読のしらべ〜へるん先生傑作選〜編(2023.04.23)

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 いよいよ開場。五番目に並んでいた私は、無事最前列に座る。勿論、佐野さんが座るであろう下手側。上手側には、山本恭司さんが使うエレキギターや音響機材が置かれているから、舞台を見れば、どこに誰が座るかは簡単に見当がつく。  ところがその日は、下手側に寄せて置かれた、アコースティックギターが見えた。 (佐野さんが弾くのかな……いやでも、松江の時は何もなかったしな。片付け忘れとかか……?)  会場の照明が落ち、いよいよ講演が始まる。  薄暗がりの中、佐野さんと恭司さんが舞台に現れた。 (うわっ!!! 今日眼鏡丸いやつだ!!! 可愛い!!!)  既に声が出そうになるのをぐっと堪えて、佐野さんの動きを一秒たりとも見逃すまいと、凝視。  恭司さんのギターが鳴り響く。その瞬間、松江旅行の思い出が、ぶわっと脳内を駆け巡った。あの時の感覚と、ライブハウスならではの、音が身体の内側から叩いてくる感覚に、胸が震えるのを感じていた。
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