1.小泉八雲朗読のしらべ〜へるん先生傑作選〜編(2023.04.23)

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 佐野さんの前に来ると、何を言いたいのか、すっかり分からなくなってしまう。 (とにかく、何か、言わなきゃ……サインが、書き終わる前に……ええと……) 私「あの……今日、宇都宮から来たんです」 佐野さん「えっ、ああ、そうなんですか。それはそれは、遠くから」 (あああああ!!! 私ってばもう!!! もっと気の利いた会話はできねえのかよ!!! くそお!!!)  佐野さんがサインを書き終え、私にTシャツを渡してくださった。  この時、なんだか、サインをもらえるのも当たり前のように思えていた。他のファンの方との距離感が、私をそうバグらせてたのか、私のことを覚えていないのなら、何をしたって構わないと思ったのか、だから、少し図々しくなっていたのだ。  席を立ちかけた佐野さんに、私は上ずった声で叫んだ。 私「あ、あの! あ、握手、いいですか?」  もうなんとでも言え。だめで元々だ。
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