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佐野さん「ああ、いいですよ」
(……??? い、いいの???)
あまりに早い快諾に、私の理解が追いついていなかった。
だから、佐野さんが右手を出しているのに、私は左手を出して、数秒、妙な間ができてしまった。
私「……あっ」
とわたわたしてから、右手を出し――
がっしりとして、大きな手だった。
あれだけ全身で朗読していて、額には汗まで滲ませていたのに、綺麗な手だった(まあ、拭いたんだろうけども)。
何より、大病を患ったとは思えないほど、肉付きの良い手だった。私の細い指の方が、よっぽど病気である。
私「うわぁあああ……ありがとうございますぅ……」
私の嗚咽にも似た言葉は、きっと他の客の雑踏に掻き消えていただろう。
私「来週のハイドパークもっ、楽しみにしてますっ!」
佐野さん「ああ、そうですか。是非是非、遊びに来てください」
(四十五も下の若造に!!! 敬語で!!! ぺこぺこしないでくださいよ!!! お行儀良すぎ!!!)
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