もう一人の住人

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「ご両親は?」 「いない」 「じゃお兄さんと二人で?」 「…………」 「でもノーチェは 自分に弟はいないと言っていたよ、 これってどういう事?」 「随分躊躇なく他人の領域に入ってくるんだな」 「あ……そういうつもりは」 言われて初めて自分が 興味本位で彼らの中に深く入り込み 過ぎていることに気が付いた。 「………………兄は、 記憶障害があるんだ。 悪いがそこには触れたくない」 誰だって踏み入れて欲しくない 家庭に事情があるだろうに 俺は土足でズカズカと。 相手を子供だと甘くみていて 配慮を怠った上にあろう事か それを当の子供から指摘されるとは。 「ゴメン、悪かった」 俺は自分の無神経さを素直に謝罪した。 もしかしたらさっき名前で反応したのも 色々事情があるのかもしれない、 そう思うと尚更悪い事をしたとの反省の意味も込めて。
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