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その雨は降り止まない
確かに散々彷徨った挙句
ほんの小さな登山道も発見できず、
下っているのか登っているのかさえも判断できなかった。
森はさして広くはなさそうなのだが
何故か奥へとは進めない。
いや進んでいるつもりが
どうしてだかこの池へと出てしまうのだ。
でもだからって抜けきれない筈はない。
今回は――
「たまたま雨が降っているから
森の出口を見付けられなかっただけで
絶対出れるさ」
ああ、そうだ、
雨が降ってるのが悪いんだ。
鬱陶しい雨が視界を制限しているから……
「そう本気で思うならこの森を抜け出てみればいい。
――出来るならだが」
「出来るに決まってるよ、雨さえ止めば」
「雨が、止めば……ね」
「もう一度行ってくる。
また顔を見に来るけど今日じゃないから。
それじゃぁ、邪魔したね」
大人気ないと分かっていても
つい言い方がキツくなるのは
それだけ俺自身に余裕がない事の
現れだったが、
「お好きにどうぞ」
イゼルのその言い方にムカついて
謝る気持ちを削がれ、結局何も言わず家を
そのまま飛び出してしまった。
(相手は子供なのに、どうかしてる)
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