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「あら、あの女の子・・・」
立ち上がって曾祖母は目の前を通りすぎた女性を目で追った。
美津江が曾祖母の散歩を兼ねて、お盆で帰ってくる姉を駅に迎えに行ったときのことだった。
三時間に一本しか電車が来ない駅に見知らぬ若い女性が一人でいるのは珍しい。
「大ばあちゃん?」
「前にも会ったことがあるよ。あんなべっぴんさん忘れられんわ」
「へぇ、いつ?」
「わしが二つのときかのう」
「それ百年前じゃん」
よく覚えてるな大ばあちゃん、じゃなくて
「似てる人でしょ。美人は同じに見えるんだよ」
「いんや、あの子だ。そんでなあ、そんとき一緒におったわしのひいばあさんがやっぱり、子どもん頃に会った女の子じゃあと言っとったんだ」
そのとき無人の改札から姉とその娘が二人で出てきた。
美津江の曾祖母とは百歳違いのその娘は、そこでちょうどその見知らぬ美女とすれ違った。
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