第三章 薬

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「まだこんなことやってたんだ?」 老医者と孫娘が並んで昼寝する家の中に入ってきたタケルが、机の上に置かれた紙束を見てつぶやいた。 「お?タケルか。もうサリが帰る時間か?キヨ、キヨ、起きなさい」 一緒に昼寝することで孫娘の機嫌を取り戻した老人は、おそるおそる小さな肩をゆする。 「あいつもう帰っちゃったんだよ」 「なんだ?喧嘩でもしたか」 「俺がかぐやと話してるのが気に入らなかったらしくて」 女はみなそうなのか。先が短いながら覚えておこうと老人は肝に銘じた。 「キヨは俺が送って行くから」 「そうだな、それで仲直りをしておいで。子はかすがいと言ってだな」 「俺らの子じゃねえけど」 キヨはそそくさと身支度を整えると、さあ帰りましょうと言わんばかりにタケルの手を取った。 「あの薬はもう諦めなよ。そんなものが欲しいか?」 タケルは紙束を目で指して言った。 「ほうっとけ。わしのじいさんが作れたものが作れないのが悔しいだけじゃ」
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