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求婚の申し出をした者はすべて面会をさせてやったが、ほとんどの男はかぐやを目の前にすると一言も発することもできず退散していった。その中で五人の貴族が候補として残った。
「あの五人の方々のうち一番気に入った方は誰かおるか?かぐや」
「私にはわかりません。おじいさまが良いとおっしゃる方のところへ行きます」
翁は悩んだ。一番お金のある人がいいのか一番人柄がいい人がいいのか、比べるのも難しい。
「かぐやの婿様選びを手伝ってやってくれないか?タケル。わしではどうしたものやら」
「見栄えも人柄も財産も五十歩百歩といったところだしなあ。貢物でも持ってこさせて一番気に入った物を持ってきた奴に決めるとか?かぐやのためにどこまで出来るか見ることができる」
「なるほど。ちょっとかぐやと話してみてくれ」
「どうせおじいさまのおっしゃっる通り~だよあいつは」
タケルはかぐやの部屋へ向かった。
「おまえ今何か欲しいものってある?」
特にない、と答えるだろうと思っていたがかぐやは考え込んで静かに言った。
「あります」
「あるの?なんだよ言えよ」
「ここのところ頭の中にぼんやりと浮かんでくるものがあるの。だんだんとはっきりしてくるのだけど何かの薬だと思う。そしてそれが私がここにいることと関係している気がするの」
「…欲しいものってそれ?」
「気になって。手にしてみたいというだけ」
「すべてを思い出したいのか?」
「わからない」
「薬のことだったら村外れの医者の爺さんに聞けば何かわかるかもしれねえけど。行ってみる?」
「爺さん!いないのか?」
タケルがかぐやを連れて老医者の家に着くと、そこはひと気がなかった。キヨが来ない日はいつもだいたい薬草を探しに彷徨っている。あの薬の原料がまだ見つかっていないから。
「しょうがない。戻ってくるのを待とう」
ごろんと寝転がるタケルをよそに、かぐやは散らかった作業場を少しは片付けようと薬品や書類を眺めた。そのとき、
「この薬だわ」
薬の成分が記された紙を見てかぐやが言った。タケルが起き上がって紙を確かめると
「…あれかよ」
それは
不老不死の薬
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