1.夏が始まる

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 ⬛︎1.【夏が始まる】場面・通学路  夏の日差しを浴びながら暑いと呟きながら歩く女の子はどこか少し元気が無い様子。それは、あくまでも体力的な話も無ければ、体調的な話でも無ければ、メンタル的な話でも無い。  肩に付かない程度の長さの髪を、後ろに束ねて暑さを軽減させ、気持ち涼しく感じさせる。  女の子の名前は、さくら。  アンパンマンが大好きな、ボブヘアに切りまとめられた髪型が似合う可憐な女の子。  普段は後ろ髪は、括ってまとめており、左耳側のもみやげの上辺りに、アンパンマンのヘアピンを付けている。  身長は平均より低め。体型は細身だが、胸が少し出ている。    暑さに耐えきれず手に持って使う扇風機を回しながら、タオルで顔を拭う。  夏の朝は涼しいようで暑い。手持ちの扇風機から涼しげな風が吹いていながらも、太陽の照らす陽が差し出していて結局の所暑いのだ。  と言うか、太陽の熱気のせいで扇風機の風もあまり涼しく無いのだ。  時間が経って行き、涼しい風も何処へやら。蝉の鳴き声が大きくなり、太陽の光が強くなる。  《ミーーーンミンミンミンミーーン……》  蝉の鳴き声のお陰なのか、より暑く感じる気がした。  ジンワリとまた汗を掻く。通学用鞄からソルティライチ取り出して、キャップを回して開け、軽く一口飲む。  冷えているお陰で、暑かった身体が少し冷えてくれた。  一つ一つ足を前へと運びつつ、踏切を前に足を止める。電車が通った数十秒後に踏切は通れるようになり、目の前を見ると友人が踏切前にあるマンションにて座っている。  友人の名前はまきというらしい。彼女は肩より長めの髪の長さをしており、またそれをさくら同様後ろで束ねて少しでも涼しさを感じられるよう努めている。  さくらを見つけたまきは瞬時に笑顔を作り、「さくちゃ〜ん、おはよ〜〜」と言いながらさくらに向かって手を振る。
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