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母の雅美は、私ーー有紀が幼い頃から、父方の祖母の介護に追われていた。
ほとんど寝たきりの状態の祖母の食事に、入浴に、着替えに、掃除に洗濯。それに加えて、幼い私の世話に、仕事人間の父の世話。自分の時間なんて、ほとんど無かったと思う。
いつだったか、祖母のオムツを換え終わって、台所でひと息ついている母に訊いたことがある。
「他の人のおしっこやうんちを触るの、嫌じゃないの?」
すると、母は笑って言った。
「むかーしは嫌だったこともあるけど、今は嫌じゃないよ。有紀が小さい頃だって、毎日オムツ換えてたのよ」
それにね、と母は続ける。
「おしっこやうんちにだって、神様はいるんだよ」
私はとても信じられずに、「嘘だぁ」と言った。
「信じられないかあ。それじゃ、寝る時にお話してあげるね。お母さんが小さい頃に、お母さんのお婆ちゃんから教えてもらったお話」
「うん! 約束!」
子供ながらに母が忙しいことは理解していて、あまり我儘を言わないようにしていた。だから、私を寝かしつける時に物語を聞かせてくれる時だけが、母と私の時間だった。
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