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「高崎が協力しない」 「高崎室長のことですか?」  隆二は頷いた。さっき高崎がここに報告に来た。あと三ヶ月で会社の資金は枯渇する。取引金融機関は追加融資に応じない。奴はそう言ってきた。  それでは倒産してしまう、というと、そうだ、と高崎は答えた。もっと知恵を出せ、考えろ、と怒鳴っても何も答えない。 「あいつはいつもそうだ。俺が苦しむのを見て楽しんでいる。数字と理論しかない冷血男だ。なにせ、あいつは『妻を見殺しにした男』だからな」  目の前の女子社員が驚いている。純粋そうな、この子には毒だったか。いや世間は汚い。ひどい奴らばかりだ。それを知るべきなんだ。 「君は、私を、いや、わが社を見捨てないだろうな」  副社長担当の秘書のように辞めたりしないだろうな。  しかし返事はなかった。腹が立った。 「お前も見捨てるのか!」  副社長、と何か決意したように彼女は目線を上げた。 「わが社はこれからどうなるんですか? 本当にウチは、品質不正をしてたんですか? 上の方たちは何も教えてくれない。みんな不安なんです。どうしたらいいか、分からないんです。それでは戦えません。社員の気持ちも考えて欲しい……ESプロジェクトの凍結を解除してください。ボクらはきっと、経営陣と社員とをつなぐことができます」  ESプロジェクトだと? 隆二は目の前の女子社員を見直した。思い出した。マスクのせいでわからなかった。役員会でのプロジェクトの報告の際、生意気を言っていた。前橋いつき、という、当時は新入社員だった。
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