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be there
ギターを掻き鳴らすその手つきは、マスターベーションによく似ていた。
二万人近い観衆の、その倍ある瞳に晒されて、愛する音を響かせながら、恍惚と首を仰け反らせるその姿。
汗ばみ、どくどくと脈打つ血管の張り巡らされた首筋。流れ落ちていく雫。
マイクを通して聞こえる息遣いは、熱を帯びていて。
群衆の中の一人になりながら、私は彼のその様を、力一杯に見開いた瞳に焼き付けた。
遥か高い天井を乱舞するレーザー光線。
ミラーボールの甘やかな揺らめき。
ステージの横に付けられた、大型のモニターに目を向ければ、現実が非現実と交差して。
ただ身体の内側に響く拍動のごときドラムのリズムが。
鼓膜を大きく震わせる弦楽器のメロディが。
子守唄のように染み込んだ馴染みのある歌声が。
『イマここにいる』ことを声高に叫び、訴えかける。
手を伸ばして駆け出せば、きっと届いてしまう距離にある現実。
けれども絶対に届かない、そうであって欲しい崇高な理想の存在。
大勢の聴衆の、その一人になりながら、私は貴方の、貴方たちの愛する空間を愛する。
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2023.05.27
BUMP OF CHICKEN『be there
さいたまスーパーアリーナDay1
ずっと好きで、でも縁がなくてずっと行くことの出来なかったBUMPのライブに初めて行けた記念。
藤くんの作る唄と、メンバーのみんなが大好きです。
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