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* * *
白い花は、彼方に見える光を見上げていた。まだ明かりの灯った部屋、人影が机に向かっている。
――明かりの灯った部屋で、ある程度書き進めた手紙を、ヴァネッサはまたくしゃくしゃと丸めてゴミ箱へ投げた。ゴミ箱はすでにくしゃくしゃに丸めた紙で溢れていて、新しく投げたものは弾かれて床に転がった。
ヴァネッサは諦めず、新しい紙を用意して、ペンを握る。
『ノイ、この前のことはごめんなさい。私、きっとちょっと、怒りすぎたみたい。』
そこまで綴って、手を止める。続きを考える。
けれども呼ばれたように、顔を上げた。正面にある窓の向こう、真夜中の街が広がっている。誰の声も、物音も聞こえず、静寂に包まれていた。
疲れているのかもしれない、とヴァネッサは再び手紙へ向かったものの。
「あっ……」
強い風が窓から吹き込み、渦巻き、書き途中の手紙をさらう。ヴァネッサの手も届かず、手紙は風と共に外へ出て行ってしまった。
どこへ行くのかは、誰も知らない。
【第三話 終】
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