令和の悪女、松田佐那の述懐

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 何のために私との結婚を決めたのか。結婚する前の誠実な彼は何者だったのか。女は私の方に勝ち誇った顔を向けていました。何度も言うようですが、私の夫への愛情は消え失せたわけではないのです。  女の尊大な態度。愛する夫のしょぼくれた態度。愛情と憤怒の狭間で苦悩する私の感情。混沌の中に身を投じたような気がしました。混沌の刃によって、私の肉体がメチャクチャにされて挽肉にされるような想像が浮かびました。  これほどショックを受けた原因は過去にもあるのです。浮気は今回が初めてではないのです。大学時代に一度、当時付き合っていた男に浮気された過去があるのです。  当時をふと思い出していました。刑事さん、昔の話も聞いて下さい。そんな嫌な顔をしないで。きっと関係してくることですから。  相手はサークルの先輩でした。ダンスサークルに入っていたため、周りにはイケている男子が多かったように思えます。その中に好みだった先輩がおり、私の方からアプローチして付き合い始めたんです。  その後、お互いの誕生日を祝ったり、クリスマスに旅行したりとかスッゴク楽しい生活を送っていたのですが、一年も経たずに彼がバイト先の子と浮気したのです。  彼の行為に納得がいかないのではなく、彼の関心が私からいつの間にか離れていた事実に驚愕しました。何が私に足りなかったのだろう、と何度も何度も考えました。  でも答えは結局見つかりませんでした。自分自身が他の女子と比べて、どこに魅力がないのか分からないままになったのです。 すみません、話を元に戻しますね。話が下手なのは許して下さい。  今回も、私自身の魅力のなさが原因なのだと思います。だから、そんな私を短い期間でも愛してくれ、結婚まで踏み切ってくれた夫が可愛くて仕方がないのです。  取り敢えず、浮気相手の女から夫を切り離したいと考えました。では、どうするか。必死に考えました。どうすればもう二度と夫が私の生活圏内から出て行かないか、一瞬の間で必死に考えました。そして一つの結論を導き出したのです。それが夫を殺すことです。
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