4人が本棚に入れています
本棚に追加
白馬の騎士には程遠い
退屈な休日になるはずだった。
春の日差しが心地よい日曜日。せっかくの快晴だが、出掛ける予定は特にない。バイト(ファミレスのホールスタッフ)のシフトも入っていない。大学(二年に進級した)のレポートは昨日完成したし、家事も午前中に全て終えている。やるべきことがない。
時刻は十二時半。昼食にツナ缶と玉ねぎでパスタを作って、映画でも観ながら食べようか。ビーズクッションの上で考えながら、俺はスマホを操作した。テーブルの上のスピーカーからハマっている海外バンドの曲を流し、何気なくSNSを見る。
最新の投稿は、バイト先の先輩・由奈さんのものだった。
俺は彼女のことが少し苦手だ。由奈さんは二つ年上の大学四年生で、都内の女子大に通っている。俺に仄かな好意を持っているようで、たまに彼女からさりげないアプローチを受けてはさりげなくかわしている。
華やかで社交的な人で、そうあるための努力もしているようだから、まあモテるんだろうとは思う。
しかし現在の俺は、バイト先の頼れる同性の先輩・柊さんに入れ込んでいるのだ。
柊さんは小柄でキュートな童顔なので、ハムスターみたいで大変愛らしい。彼も俺の二歳上なのだが、とてもそうは見えない。
しかも、柊さんは無意識に俺の心を射貫く言動をするので、内心振り回されっ放しだ。あの純真な可愛さにヤられてしまっては、由奈さんの作為に満ちた仕草を見せつけられても白けるだけなのだった。
そんな柊さんは就職活動が本格化したため、バイトのシフトを減らしている。以前は俺の部屋を訪れてくれることもあったが、最近は全然来なくなった。仕方ないことだが、正直寂しい。
最初のコメントを投稿しよう!