ある酒場にて

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3年前…。 マフィリク王国首都フィクリマの冒険者の宿【青い蕪木亭】にて。 冒険者が5人、次のダンジョンの攻略方法を相談していた。 「つまり、ラスティオが前に出れば良いんだ。 アデラが後衛から援護する。」 確か、情報屋によるとダンジョンのボスは物理攻撃が強いサイクロプスだった。 どうしても安全に戦うにはタンクがいる。 「構わんが、分け前はその分もらうからな。」 席に横柄な態度でひっくり返り、エールを煽るラスティオ。 重厚な鎧は、幾度の攻撃を受けてボロボロだった。 「ずいぶん使い込んだものね。 次の稼ぎで、新調しようか…もう少し良い鎧が手に入れば良いんだけど。」 魔法使いのアデラインは、ラスティオに庇われることが多かった。 30も越えているが、いまだに衰えない美貌でラスティオに庇われたことでいろいろ言い寄られていて、装備の新調は色恋話をかわすのに都合がいい。 「それはプレゼント、ということか?」 なかなかに単純に話を持っていくが、たぶん脈はない。 この冒険が成功したら、ラスティオは引退してアデラを自分の屋敷に迎えに行こうか考えているが本人にそのつもりはなかった。 「そんなわけあるかい。」 ワインを一口啜りながら、面倒そうに手を振った。 アデラはアデラで、いまだ冒険者稼業を辞めるつもりはなかった。 知識の探求欲が、いまだに疼くのだ。 「ははっ、またフラれたな。」 「ラスティオ、お前も懲りないねぇ。」 仲間にからかわれると、ラスティオは顔を真っ赤にした。 「うるせぇ!」 怒鳴り散らしてから、最後の仲間の方に視線を向ける。 「クスト、お前はどうよ。 次の装備は俺に譲るのか?」 クストと呼ばれた冒険者は、ソーセージにかぶりつき、エールを飲んでいたが…仲間からの問いには答えた。 ブロードソードと軽鎧、至って特徴のない冒険者だ。 「ラスティオが唯一シーフ技能を持っているんだから、分け前はいつも一番多いだろ。 俺たちはほとんどお前の護衛のようなもんだが、発掘技能にはかなわないからな。」 クストは少しくたびれたように見えた。 もはや冒険者として20年近く…ランクは成長の見込みのない中堅のB…体力的にもそろそろ限界を感じていたかもしれない。 そういう意味では、彼も理由こそ違え引退を考えていた。
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