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齢六十を越えても冒険に盛んな冒険者はいるが、クストは後進の育成を考えていた。
幸い、フィクリマの冒険者ギルドでは新人冒険者の育成教官の仕事もあり…多少なりと賃金も出る。
まぁ、それもその冒険を切り抜けてからだが…事前情報があるとはいえ、危険なことには変わりないからな。
「分かってるじゃないか、クスト。
出発は、明日で良いか?」
ラスティオは上機嫌だった。
「構わんが、あまり飲むな…明日に響くぞ。」
ダンジョンへは徒歩である…歩いているうちに悪酔いされたら困る。
「俺は飲んだ方が調子が良いんだ。
フィッシュチップスとエールの追加!!」
給仕の女子に、声をかける。
「はーい、ただいま!!」
嬉しそうな声が響いた。
「こりゃ、ヤケ酒だな。」
「てか、ラスティオも失恋が続いてるのに諦めろよ。
若手はまだまだいるんだぞ。」
残っているエールを飲み干すラスティオを、仲間が茶化す。
「背中の預けられん若手なんぞ、組むに値せん。
育ちきる頃にはみんな老いてしまう。」
冒険者は過酷な職業だ…相棒として自分の実力に見合った仲間を見つけるまでたくさんの仲間と時間を犠牲にする。
攻撃と防御の組み立てなどの戦いの呼吸、生命と背中を預けるだけの信頼感、探索のクセ、宝の分け前など苦難を乗りきった経験は伊達ではない。
後進を育て上げる前に自分も、例外なく倒れる可能性すらある。
まさに綱渡りだ。
「組むこと前提かよ、冒険者だな。」
冒険者はあくまでも冒険者でしかない…そんな自分たちも若くはないのだが。
「まぁな、そんな簡単に変えられるかよ。
ここも、ずいぶん【荒んで】しまったが。」
追加のつまみと酒か来たので、飲み食いしながら酒場を眺めるラスティオ。
活気ある冒険者が、次々と酒を酌み交わして冒険話に花を咲かせている。
とても退廃的な空気には見えないが。
「確かに【荒んだ】な。」
クストも、ラスティオの感じる空気を読み取った。
前文明の巨大遺跡が見つかってから、冒険者の数が国の外と内から次々と増えていく。
探索と調査と雇用で、国の経済と文化が潤っていく。
しかし、遺跡は探索しつくされていつか枯れてしまう。
用済みになった冒険者が培った自分の技術と力をもて余して山賊や犯罪者の護衛などの裏稼業にやつしていく姿を旅慣れた熟練の彼らは知っていたし、そんな輩の討伐依頼を受けたこともあった。
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