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ほどなくして、竜郎は呆気なく心臓の発作で亡くなった。元々大酒飲みだし、タバコもやめられなかったのだ。
お互いに身寄りもなく、一人娘は父親を嫌厭しており、竜郎が自宅に戻って来てからと言うもの一切寄り付かない。
竜郎をヒッソリ荼毘に伏す。それで全てを終わりとした。
四十九日となり、お骨をお寺に持って行った。住職さんからアレコレ聞かれなかったことに救われた。昨今、別に珍しくないのだろうか。
「亡くなった旦那様、あの世から奥様を追いかけて来そうですけども」
「はい、そんな気がしております。でももう遅いのです。私はこの世で散々あの人を追いかけましたから。」
住職さんは不思議そうに目を見開いた。
「はて。結局奥様のところにお戻りにならなかったから、その腹いせに旦那様を無縁仏に?」
なるほどこの住職さん、随分と俗っぽいことを言う。
「逆ですわ。主人は戻って来てくれたけども、私が今度は逃げたくなったのでしょうね。」
「それはそれは…」
住職さんが言葉を失ったところで、失礼して来たのである。
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