チェイサー!

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「あいたっ!」 気をつけろ、と悪態をつきながら目を開くと、五十木の瞳にタクシーが数メートル先を進んでいく様子が飛び込んできた。しかも五十木より数メートル位置が低い。というよりも、上空にいる五十木がタクシーを見下ろす格好である。タクシーはどんどん遠ざかっていく。 「おい、客を置いていくな!」 五十木はタクシーを追いかけた。……待てよ、何か変だ。 「俺、タクシー降りてないよな?」 なぜ俺はタクシーを追いかけているのか。しかも、宙に浮かんで。……宙に浮かんで?五十木が恐る恐る足元に視線をずらすと、そこにあるはずのものが見えず、ただ道路を車がびゅんびゅんと行き交っているのが見えた。 「俺の足、どこ行った!?」 足が、ない。五十木の腰から下、二本足が一つにまとまり、薄く引き伸ばされた餅のようにニョロニョロとしていた。しかも胴体から先っちょに向かうにつれて色が透けて見え、先端はほとんど透明である。 五十木は自分の身に何が起こったのかまったくわからなかった。わけもわからぬまま、とりあえずタクシーを追う。後部座席にもたれかかった人影が見える。あれは俺の後頭部だ。五十木は午前中に美容院に行ってきたばかりだからよく分かった。
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