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決めた
悠希くんと映画を見に行った次の日は、演劇クラブで、なんと新作の劇の話し合い!
びっくりしたんだけど、悠希くん以外にも二人、ドラマとかに出たことがある人がいた。
だから難しい演技でも大丈夫だからそこは気にせず思いっきり脚本書いてって言われたけど……。
そうは言っても難しい。
でもまずジャンルとしては、悠希くん以外もファンタジー好きってことですファンタジーになった。
あと宇宙をテーマにしたいって話も出て……。
「夕菜ちゃん、頑張ってね!」
演劇クラブのみんなが応援してくれる。
「ひえー」
「夕菜ちゃんなら大丈夫よ。だってここの脚本の試験、すっごく難しいらしいから。それ突破してきたなら大丈夫だよ」
「うっ」
後ろめたい……。
でも、ゆめのぬいぐるみによって、私はこの渚ヶ丘芸術学園に入学したことになっている。
これは変わらない事実なんだから、迷惑かけないように頑張らないと……。
「私、来週までにある程度脚本書いてくる」
「すごいっ。来週までに⁈」
みんなは驚く。
私、書くのは早め。たくさん文章を書くことはできるから、話を思いつきさえすれば、ちゃんと大丈夫なはず!
そして机に向かいっぱなしの週末が明けて。
私は家で印刷した脚本を演劇クラブのみんなに見せていた。
みんなが一つのところに集まってるから、小ホールがすごく広く感じる。
で、すごく恥ずかしい!
シーンとしてるけど、私の書いたものがどんどんと読まれてるわけでしょ?
き、厳しいよこの状況。
だから私はそろそろーっと一人でホールのすみっこに移動した。
そして移動しつくして透明人間に追い詰められたみたいになった時。
「これ、かなり面白いね」
私の大好きな声が響いた。
悠希くん……! それお世辞だよね?
ちゃんとしたドラマとかを演じてる悠希くんが、私の書いたお話にそんな高い評価をするとは思えない。
でも……
「私、この宇宙の征服を狙う悪魔役すっごくやりたい。てかやるし」
「確かにお前悪そうだもんな」
「ん? それどういうこと?」
「い、いや、お気になさらず!」
結構面白いと思ってくれてるっぽい。
そしてそれから、私は置いてけぼりで、誰がどの役をやるかの話し合いが始まった。
でも、悠希くんは早々に主人公確定みたい。
みんなからの信頼がすごいよ。
でも、私が主人公を描くときに、悠希くんをイメージしなかったと言えば嘘になる。
でも、みんな本当に演技が上手いから、誰がどの役をやっても絶対すごいし、私も誰がどの役をやってもいいような風にそれぞれのキャラクターを描いたつもり。
「夕菜、天才かも」
いつの間に、悠希くんがこっちに来ていた。透明人間から身を潜める二人。
「天才なんてことないよ」
「いや、でもこの話本当に面白い。撮影の時にお世話になってるプロの映画監督とかに見せても、絶対褒められると思うよ」
「そんなに?」
でも、もう悠希くんがわざと過剰に褒めてるとは思えない。
だとしたら……これもゆめのぬいぐるみの効果である可能性は?
私の書いた物語が、ゆめのぬいぐるみの力によって受け入れられるようになっているとすれば。
それは……嫌だし、怖い。
そんな形で夢が叶うくらいだったら、もう一度ゆめのぬいぐるみと出会って、「ゆめのぬいぐるみの効果を取り消す夢」を話したい。
そしたらもう、悠希くんと会う機会もないかもしれないけど、でもそれの方がずっといいと思うから。
「どうした……?」
「なんでもないよ。褒めてくれてありがとうね」
私決めた。
ゆめのぬいぐるみを探す。
噂通りなら、この街のどこかの小学生のところにいる。
そしてランダムワープってことは、まだそのまんま動いてない可能性だってあるよね。
桜の花びらを降らせた人のところから。
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