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ゆめのぬいぐるみの効果
夕ご飯は肉じゃがでめちゃくちゃ美味しかった。
お母さんの肉じゃがはたぶん世界で一番味が染みてると思うよ。
でも、そんな私も部屋に戻ったらそれどころじゃなくなった。
なんでかって……
「ないんだけど。クマのぬいぐるみ」
消えてる。
もしあの噂通りだとすれば、ランダムワープが起こったってことだ。
そして、私の夢は、どこかに行ってしまったクマのぬいぐるみの耳には入っている。ぬいぐるみが声を耳で聞いてるかは知らないけどさ。
なんかそわそわする。
私……夢を聞いてもらった?
どうなるの? これから。
でも結局私は結構なお気楽人間。
夜遅くなってきたら普通に眠くなってきたし、やり忘れてた宿題をやったらすぐにベッドに入った。
その日の夜はぐっすり寝た。
そしてそんな私はお姉ちゃんの声で目を開け……
「夕菜! あんた転校初日から遅刻していくの? 度胸やばすぎじゃない?」
「は? え、なんのこと?」
「今日から行くんでしょ。あの、渚が丘芸術学園に。寝ぼけんのは終わり」
「渚が丘芸術学園?」
それって、いろんな芸術の天才とか芸能人とかが集まった、超人気な学園じゃん。で、そこに私が転校?
ここで思い出した。
そうだ。私、夢を語ったんだった。
その夢は、自分の書いた物語の主人公の役を悠希くんにやってもらうことで。そして何を隠そう、悠希くんは渚が丘芸術学園に通っている。
これ……やっぱりゆめのぬいぐるみの効果だ。
おかしい。五年生になってまだ数日くらいだよ。そんなタイミングで転校って……だったら新学期から転校するじゃん普通。
でも……ちょっとわくわくしている。
だって、ほぼ確定でしょ。悠希くんに会えるの。
それに、ゆめのぬいぐるみの力が本物なら、それだけでは終わらない。
きっと悠希くんとしゃべったりも、できちゃうんだ……。
でもそんなハッピーなことを考える前に一つ問題。
渚が丘芸術学園までの道がわかりません!
私はスマホでホームページを調べて、そこに載ってる地図をじっくり見つめた。
うん、地元だし、行き方はこれで分かった。
早速、今日から行くしかないよね?
だって、転校初日ってお姉ちゃんは言ってた。当然のように。
よし、いつもの持ち物の準備をしなきゃ。
あれ、いつもの持ち物って言っても、今までの小学校の話だよね? 今日から行く渚が丘芸術学園で何が必要かは、全然知りません!
とりあえず……給食袋と筆箱は入れておこう。
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