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娘
私がこれまで経験した受胎告知は、めっぽう変わっていた。この二十一世紀という現代に生きながら、二回とも妊娠検査薬ではなかったのだから。最初は長野善光寺での護摩壇祈願時である。当時の私は子宝に恵まれなかったので、初詣に行ったついでに祈祷に参加してみたのだ。
この、ついでという言い方はいかにも神仏に失敬千万だ。しかし有名寺の元旦ともなれば、雪が舞おうが槍が降ろうが黒山の人出。当然ながら寺の門をくぐるにも長蛇の列、お参りするまでにも列また列だった。
人いきれにうんざりし、白い息を深く吐きながら私は考えた。だいたいこんなに大勢が一挙に押しよせて願い事をがなりたてたところで、はたして神仏は逐一それを聞き届けてくれるのか。私が神様ならまず無理だ。ブラックワークすぎる。
しかるに粉雪舞う中ここまで出張って、なにも願わないというのもなぁ。もうここまで来たからには意地でも祈ってしまいたい。
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