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 しかしまぁ、とにかくあの(たぬき)や日和見主義の(きつね)が幅をきかせる職場にいかなくてすんだのはラッキーだった。(たぬき)はあの後どうやって認証更新を乗りこえたのだろう。あの年、講習会は開かれなかったが――。  そんなこんなで仕事に追われながらも、第一子は元気に育った。出産日になってもまだ(はら)の中で泳いでいたほどだ。医者に歩けと言われたので二時間ほど歩いたら夜中に(じん)(つう)がきたので翌朝に出産した。初産でそれなりに大変だったけれど、だいたいの出産は修羅場である。大げさに書くほどのこともない。  私は娘が幼子のころより言い聞かせている。あんたはね、善光寺さんから(さず)かった子なんだよ。しかも不動明王だ。だからきっとこれからも運気は強いほうだし、ご加護もあるだろう。(じゆう)(じゆう)感謝して(ぞん)(ぶん)に努力しなよ、と。
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