息子

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「いや、この子は大丈夫」  理屈では説明できない。しかし私には確信があった。なんというか、母の勘である。だいたい後進国(大都市圏外)では毎日トラブル続きでライフラインすら(あや)うい。やれ水が出ない、ガスが止まった、無計画停電で米が()けない。対策に(ほん)(そう)している時に親と長電話している(ひま)はない。  食べて出して寝なければ生きられない。しかし基本それさえクリアすれば大概の(こと)(がら)はどうにかなる。(へき)()で生き()びるにはタフであらねば。連日サバイブするうち安定期に入り、ようやく私は順調に太っていった。よし。  しかし二回目はとにかく足がつる。腰が痛い。(つか)れやすい。働けない。これが丸高(マルコウ)の現実か。私はがっくりしながらソファへ寝転がり、リビングの天井へ薬液を()りたくる業者を(なが)めた。  当地の古家はどこもシロアリにやられており、天井から木くずが落ち続けるので、その日は兄ちゃんが二人来ていたのだ。
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