姉を越える

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姉を越える

 お姉ちゃんに追いつけない。  遠くはならないが近づかない。  最初は僕がテストでひどい点を取ったからだ。 「私にかけっこで勝ったら黙っていてもいいよ」   お姉ちゃんは僕のテストを取るとそう言って走り出した。  僕も走り出す。  コースは家の周りを二周だ。  もうすぐ誕生日なんだよ。だから誕生日までこのテストは見せられないんだ。  誕生日さえ過ぎれば。あとはどうなってもいいんだ。  お姉ちゃん速い。  お姉ちゃんは立ち止まりニヤニヤ笑う。 「あと一周」  お姉ちゃんが走り出す。  むかつく。  お願いだ。どうなってもいいからと思ったら体が軽くなった。  これがランナーズハイなのか?友達が言うには火事場の馬鹿力とも言うらしい。火事場の馬鹿力がくそ力になると奇跡が起きるらしい。  お姉ちゃんとの距離が縮まる。  抜いた。勝った!勝ったぞ!  そして僕は力尽きた。 「かけっこで勝ったからってテストの点数は変わらないのよ?」  お姉ちゃんはそう言うと。テストをひらひらと踊らせながら家に入っていった。
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