誰よりも早く、出勤したい。

受電率は厳しくノルマ化されており、受付女子たちは常にカリカリしている。
チラシ制作者から余計な質問をしてこられると、その間の受電を落としてしまうかもしれない。そのため、質問してくる制作者には、

「以前も同じ質問されてましたよね？ 質問の前に検索して確認してください！」とか、
「ルールが変わったことは昨日に周知されているはずです！」とか、

容赦なくビシバシ返してくる彼女たちであるが、小池さんには決してそんな言い方はしない。

「おつかれさまです。ご質問いただきましたID：×××に対する回答は、～～～～です。お手数ですが、よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。お忙しいところ、ご対応・ご回答ありがとうございます」

この小池さんのメッセには必ず💖を付ける彼女たちであった。

彼女たちのなかには
「小池さんってきっと実際もすてきな、男らしい人に違いない！」
と思って、彼に惚れている者はひとりやふたりではない。

実際の小池さんは巨漢デブなのであるが、テレワーク勤務が始まってから入社した者は、小池さんの顔姿を知らない。だからこのような誤解が生じるのである。これぞ、テレワークの妙味である。