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三 「君がそこまで言うのなら」32
私は自分のことよりも彼女のことを思って上司に抗いました。それでも事はおさまりませんでした。
「君がそこまで言うのなら、しかたがない。では、彼女を異動させるか」
私は部長の言葉に自分の耳を疑いました。
「どういう意味ですか」と私は食い下がりました。
「二人を同じ職場にいさせるわけにもいかんだろ」
当然の対処だと言わんばかりでした。
「それではあらぬ噂を認めたことになります。そんなむちゃくちゃな」
上司は私の言い分など聞き入れてくれませんでした。
「会社のために、自分の真意よりも、是非よりも、回避することが先決ではないのかね」
部長は結論ありきの言動を進めます。
私は彼女の異動を回避することが第一優先だと判断し、
「彼女はいろんな事があって、やっと今の明るい性格に変われたのです。今の環境を変えさせたくはありません。ですから彼女のことは守りたいのです」
私は心からお願いをすれば、部長はほくそ笑んで、
「君を昇格させて異動させるわけにはいかないぞ」
部長は勝ち誇った表情で、私から最後の言葉を待ち望んでいました。
事実無根の言いがかり。抵抗もしましたが、彼女も異動対象になった取引条件がある。私か彼女の選択あるのみ。彼女の生活環境が変われば、彼女の精神面が心配だ。結論は出ています。
「私が全責任を負いますので、どうか彼女をおとがめなしにしてください」
私は部長に頭を下げて、すなおに処罰されることを申し出た。
「全責任を負うか。潔いことだ。事をおさめるにはこれしかないんでね。まっ、数年だけがまんしてくれ。いずれ呼び戻してやるから。話はついた。もう戻っていいぞ」
杉田さんは身を削って、彼女を守りとおした。私はなぜだかわからないが、、ふと、昔テレビで観た、自らの身を削って、幼い子に愛を与えているパンキャラのアニメシーンを思い出した。どうしてなのかはわからなかった。
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