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三 「君がそこまで言うのなら」34
杉田さんが送別会のことを話し始めた。
異動の前日、杉田さんの送別会が開かれた。彼女は参加しなかった。いつも通りと言えばいつも通りだ。今までとなんらかわらない行為だ。
送別会ではみんがうれしい事を口々に言ってくれました。
「どうして課長が」
「私たちはこれからどうすれば良いんですか」
「仕事が楽しいと思えるようになったのに」
「職場が自分の居場所だと感じられたことは今までなかった」
「朝、課長の顔が見られないのは辛くて寂しい」
部下たちには感謝をしても感謝しきれないくらい、素敵な気持ちの餞別をいただきました。
私は間違ってなかった。と生きる糧を貰ったと思えました。
もうひとつ、うれしかったのは、「三田さんも来ればよかったのに」と誰かが言ったあと、「身内の会だから、なにも気にしなくてもいいのに」と男たちが言ってくれたことです。
「彼女のことはよろしく頼む」
私は心から願い、彼女を彼らに託しました。
しんみりした家に帰り、私はいつもより酔っていました。お酒の力もあったのかもしれませんが、私は彼女にメールを送信しました。返事を待っていました。ずっと待っていました。ひたすら、「いつかきっと」の言葉を胸にして、ただ信じて待ち続けた。
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