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三 「君がそこまで言うのなら」35
私は彼女のことを考えた。
彼女もまた杉田さんと同じ気持だと想像できる。
不安な日々を過ごしながら、唯一信頼できる人の言葉を待ち続ける。街中で迷子になり、不安の中で信頼できる人を待ち続ける心境だろう。それでも必ず自分のところに迎えに来てくれると信じているように。
杉田さんからメールが届いたとき、耳から脳に伝達されるよりも速く、彼女には笑みがもれたのではないか。
杉田さんが少し表情を和らげて話しました。
私は彼女からのメールを見て、魂が震えました。
「いつもそばにいてください」
「もちろんですよ。あなたは私を支えてくれていたのですよ。こんなことで私たちの関係が途切れるわけがない。終わることなどありません。もう大丈夫ですよ。悪夢は終わりました」
「でも、あまりにも代償が大きかったです。それに、残される方は辛いです」
「大丈夫。大丈夫。安心してください。崇高な精神は永久に続きます」
「それ、ギャグですか。安心してくださいが流行ったのは随分前ですよ」
「流行遅れのギャグは、昭和のおやじギャグということで容認してください」
「わかりました」
そのあと、眠くなるまでメールが続きました。内心、荒ぶっていた気持ちが癒やされていきました。その夜は久しぶりに熟睡できたのです。
杉田さんのエピソードを聞いて、私は、その日の夜、彼女は夜をとして泣き続けたのではないかと想像ができた。
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