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三 「君がそこまで言うのなら」38
私は時間をとって告白してくれたことに感謝をして立ち上がりました。私が荷物を手にして、玄関に向かい、最後にもう一度お礼を言ったとき、杉田さんが微笑んで言ってくれました。
「安心してください。あなたが思っている以上に彼女は人から愛されていますよ」
「それ、本当ですか」
私は驚きで腰が抜けそうになった。
「そんなに驚くことではないでしょ。いずれわかる日が来ます」
「機会があれば彼女に直接聞いてみます」
「機会って、あなたなら、必ず彼女のところへ会いに行くでしょ。彼女を支えてあげてください。同じ女性の立場で相談に乗ってあげてください。あなたは逃げないでしょ」
杉田さんはとても爽やかな笑顔を向けた。
「もちろんです」と伝えて私は杉田さんの部屋をあとにした。
私は今日の話を整理しながらノート・パソコンにまとめていた。
最初、杉田さんは憐れみに近い感情を抱いて彼女を見ていたのではないかと考えていたが、そうではなかった。互いに折れそうになる心を支え合っていたのだ。
二人は人生の転換期を迎えていた。互いの成長を助け合う存在として位置づけ、寄り添ったのかもしれない。
そこに愛情は存在するけれど、恋愛感情は存在しない。
それがいまいち理解に苦しむところだ。振り返って、杉田さんの話を整理して思い出せば、杉田さんは彼女の仕事のミスについて、ひとことも話さなかった。これも杉田さんの心遣いなのだろう。繊細な心で、繊麗な思いで、おおらかな愛の水が流れている。人目につかずとも、地下水のような静けさと清さを保って流れ続けている。尊さがしみるように伝わってくる。
私は、とにかく一言一句を書きもらさないように何度も読み直し、訂正や追記を加えた。
【第三話:了】※専念したいことがありまして、「第四話」は1月下旬~2月頃に再開を予定しています。またよろしくお願いします。
あなたにメリークリスマス。
それから良いお年をお迎えください。
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