四 「一緒にいられることが楽しい」1

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四 「一緒にいられることが楽しい」1

 先日から整理した内容について、私は熟慮した。  まだ終着駅には到達していない。なにかが足りない。すっきりしない。二人がすべてを打ち明けていない気がする。 「魂の家族」という言葉が、すんなりと胸に届かない。「ソウルメイト」という言葉もあったような気がする。  わからない。まるで白一色のジグソーパズルに挑戦しているみたいだ。最初からピースごとに色の違いがないから、真実の形が(とら)えられない。しかし、はまらないピースの形だけが、ぽっかりと空いていることだけがわかっているような感じだ。見極めるには難易度の高い真実が眠っている。人生経験が未熟さゆえ、彼らから真実をさらけ出させるのは至難の業だと、今更ながらハードルの高さにがっくりと肩を落とした。  日曜日に彼女の家で再度話を聞かせていただく約束を取り付けた。  当初は隔週で予定が入っていたようだが、最近は毎週予定が入っている。土曜日にはなにかあるとふんだ私は、次の土曜日はどうでしょうかとわざと訊いた。  彼女の返事はだめとのこと。  雰囲気的に習い事とは思えない。誰かと会う約束があるということだ。日曜日の午後であれば私と会える。ということは、相手も日曜日中に帰らなければならない遠距離恋愛なのかもしれない。  自ずと杉田さんの顔が浮かぶ。  本当に二人の間には恋心がないのだろうか。それとも再び悪い噂をたてられ、互いに傷つくことを避けているのだろうか。二人で互いを守り合っているのだろうか。  しかし、杉田さんの告白を鵜呑(うの)みにして考えれば、恋人同士と考えるのは違和感が出てくる。告白をまとめた文字の行間に、なにかが存在している気がする。気にはなるけど確証が持てない。頭の中がぐらぐらとゆれてまとまりがつかない。やはり彼女からはっきりした告白を聞かなければ、真実は見えてこない。果たして彼女が正直に打ち明けてくれるのか、疑問だ。私は彼女との打ち解け方が浅くて薄い。もっと彼女に踏み込んでいかなければならない。彼女の信頼を得なければ真実にたどり着けない。彼女から直接話を聞かなければ、いくら頭の中で思考をめぐらせても真実にたどりつくこともできない。彼女に近づいていると思っていたが、まだまだ遠い存在だ。  結局、彼女について私の理解が足りないから迷ってしまうのだ。人を理解することにおごってはいけない。謙虚に正面から向き合わなければいけないのだ。  私はまとめた資料を印刷してファイルに()じた。
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