四 「一緒にいられることが楽しい」3

1/1
前へ
/185ページ
次へ

四 「一緒にいられることが楽しい」3

 私は杉田さんから、教えられ、励まされ、守られ、仕事と生活をがんばりました。杉田さんとの二年間は、一瞬の光でしたが、充実した日々を過ごせたと思ってます。何かあったときは、杉田さんが視界に入るように目を向けるだけで安心できました。しかし、あの件で、安心できる人が視界から消えました。今は杉田さんが職場にいない。不安が増し、寂しさがつのり、心細い日々を過ごしました。どれだけ大切な人であったのかを心の震えで痛感しました。と彼女が打ち明けたあと、一度話を区切り、そうですね、あなたがもっと理解しやすいように簡単に答えましょう。と言って、彼女はQ&A方式で告白してくれた。 「大切な人ですかと問われれば、イエスです」 「大事な人ですかと問われれば、イエスです」 「好きですかと問われれば、イエスです」 「そこに愛があるかと問われれば、イエスです」 「でも、恋人ですかと問われれば、ノーです」 「私にとってはかけがえのない人です」  彼女は杉田さんと同じようなことを言った。  しかし、若干、微妙にニュアンスが違う答え方をした。結論的に恋人感情がないということは二人とも一致している。 「杉田さんはもう独身ですよね。ならばあなたが杉田さんを好きになっても、お互い愛し合っていても、不都合なことはないと思いますが」 「そこは勘違いされているようですね」 「勘違いですか」 「第三者の方には理解しがたいことですので、誰にもわからないと思います。また、誰かにわかってもらおうとも思っていません。私たちが確信していればいいことですので」  確かにプライベートなことなので、私が納得する必要はない。私に納得してもらう必要も彼女にはない。私が二人の思いを左右する権限などどこにもないのだから。でも、知りたい。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加