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四 「一緒にいられることが楽しい」19
彼は就職するまでのことを一気に話した。彼はトイレへ行くために席を立った。
私は身体に震えを覚えた。
どうして三人が似たような経験をしているの。彼女も、杉田さんも、神崎さんも、家族から離れ、孤独に追い込まれた経歴。似たような境遇だから初めてであったとき、懐かしさを感じたというの。
孤独が引き合わせた運命だなんて。
もしそうだとしたら、あまりにも哀れな感情ではないか。互いが感じた第一印象は、生い立ちが生み出した心の共鳴だとでもいうのだろうか。悲しすぎる。寂しすぎる。辛すぎる。私はどんよりとした黒い雲に包み込まれたように、じめじめした息苦しさに取り囲まれていた。
彼がトイレから戻ってくると、驚いた感じで私に声をかけた。
「どうしたんですか。そんなにかしこまって」
私は両膝に両手をついて、両腕をまっすぐ伸ばし、頭の部分だけをカウンターに向けて固まっていた。
はっとして神崎さんの顔を見た。
「重くて暗い話でしたか。表情が硬くなっていますよ。でも、大丈夫ですよ。もう昔の話ですから。それから同情はやめてください。僕は同情されるのが大嫌いですから」
私は声には出せず、顔を横に振ることしかできない。
彼はグラスに残ったスコッチを飲み干しておかわりをした。私にも飲み物をすすめてくれた。
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