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五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」7
神崎さんとの出会いは、彼女にとってタイミングが良かったと思う。と語った。
「最初は神崎さんにからかわれているのかと思いました。神崎さんは私より年下ですから。杉田さんにメールで相談したこともあります」
「今は、恋愛をすることで、互いの年齢なんて考える時代ではないですよ。女性が年下の男性を選ぶのはごく普通のことですよ。珍しいことではありません。相手の愛情が第一ではないでしょうか。頭の中で考えるのではなく、心で感じることが大切ですよ」
杉田さんの返事を見て、ほっとしました。
「神崎さんは、俺についてこい。というタイプの男性ではありません。一緒に歩いて行こう。一歩、一歩、季節を感じ、風景を見つめて、心を寄せ合いながら生きていきたい。あなたの前では虚勢を張らずにいられる。あなたのそばにいると安心で、気持ちが穏やかで、僕にとっては、とても居心地が良いんです。と神崎さんは言ってくれました」
彼女が私に顔を向け、かわいい笑顔を見せてから話を続けた。
「社交的な人ですが、私に合わせて緩行しながら外の世界も見せてくれました。二人の時間がとても楽しいです。また、私たちがつきあうことで、恋人同士であると他人にひけらかす必要もなければ間行する必要もない。と神崎さんは言ってくれました。ゆっくり心にしみてくるような人です。あなたが気になっているようですので話しますが、杉田さんと神崎さんの違いは、神崎さんには少なからず私を女性として求めている感情がどこかにあります。だから私も家族的な思いだけでなく、男性としての感情も受け入れています。自分が思っていたよりも自然に受け入れることができました。ひとつ、ずるい話をしますが、私にも愚痴を言える人が必要です。楽しいことばかりを想像していません。たまに仕事のことで愚痴り合うのもいい。それが異性ではなく、家族なら、一生別れることはありません。ずっと失わずにいられます。だから安心なんです。私は一人じゃないと心のどこかで余裕が生まれます。私の大切な人に、身体が無理なときは、心がそばにいてほしいと思っています。またそうであると信じています。そしてこれからも信じ続けます。もう心だけは孤独にならないと」
彼女の打ち明け話に、私はうっすらと感動したり、驚きの表情を浮かべたり、しかめっ面になるような気になった。
私、もしかして、らやましがっている?
神崎さんは恋愛の彼氏として、杉田さんは離れない家族として、キープみたいな。
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