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五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」12
一週間後、事態が動いた。
美濃輪部長、堤次長、西崎課長の三人に、辞令が出た。
誰も事情がわからない。憶測の域を出ない噂は真偽のほどがいぶかしい。
どうして。この時期に異動。なにがあったの。真意が顔を出さない。
社内では公言できない雰囲気が漂い、暗黙の厳戒令でも出されているようで、内心は気になりつつも軽々しく話題にしない。
なにが起こっているのか、不安だけが日々つのっていく。おぼつかない状況が続き、ストレスが溜まっていく。
先日、杉田さんが戻ってくるという噂を耳にして、ほっと安堵はしたものの、事態に変化はなかった。
尾ひれの噂が一人歩きしたらしい。
期待した反面、噂に裏切られた思いは、落ち込みが激しかった。
ある日、神崎さんから連絡が入った。
会社の近くではなくて、私が通勤する沿線上のどこかの駅で会って話したいとのことだ。誰にも気づかれないようにしてほしいと頼まれた。
神崎さんにしては慎重な誘い方だ。
私は神崎さんの要望を受け入れて、七時過ぎに待ち合わせた場所で待っていた。十分ほどして神崎さんが現れた。立ち話もなく、神崎さんは目指すお店に足を向けた。
お店までの道程で、「私たちだけですか」と問えば、「そうです。気を遣いますか」と訊いてきた。「気を遣うことはないけど、急なことでしたので」と言えば、「変な噂が広まっているので、あなたの耳には真実を伝えておかなければと考えました」
神崎さんは背中を見せたまま話した。
お店に入り、奥のテーブルに私たちは座った。
注文を通してから神崎さんが語り始めた。
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