五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」18

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五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」18

 妹がぶすっとした表情を向ける。 「あんたこそなんだよ。最近、仕送りが減ったと思ったら、こんなところでお金を使って遊んでいるくせに、いっぱしの大人ぶって説教なんかするな。えらそうに。嫌なことばっかりだから、こうして憂さ晴らしをしてんのよ。自分のお金でストレスを発散して楽しんでいるんだから、おばさんは邪魔するな。自分勝手に家を出てって、自分ばっかり自由に生きやがって。ふざけんなよ。ああ、気分悪い」  彼女は妹の言いぐさにショックを受けた。  妹のためにお金がいると仕送りをねだってきた母親がいる。  親の目から離れて、男たちと飲んだくれるためにお金を使っている妹がいる。  最初、鉢合わせになり、気まずい雰囲気が漂ったけど、すぐに蹴散らして、荒くれた言葉で逆ギレをする妹。お金をせびる母親から逃げ出し、やっと自分の居場所も見つけた。  しかし、お金の無心は変わらなかった。節約して、工面して、お金を捻出して、仕送りを続けた。その結果が今日明らかにされた。  無駄金だ。  お金をどぶに捨てるのと変わりない。  私はなんのために今までがんばってきたの。こんな場面と遭遇するため。こんな妹の姿を見るため。こんな罵りを聞かされるため。なにもかもがまっ白になっていく。私の人生には色がない。もう、うんざりだ。彼女は様々な怒りを吐き出した。 「私は、あなたがこんなことをするためにお金を送っているんじゃない。生活を切り詰めて切り詰めて仕送りしているのに、なんの感謝もなく、この私を罵っている。思い通りにならないですって。たいした努力もしないで思い通りにならない人生に不満を持って、周りをねたみ、やけになってる姿を見て理解でもしろって言うの。身近な人間と比較して相手をねたむより、自分がどう生きていけば楽しく生きられるかを考えなさい。周りの人間がどんな生き方をしようが、あなたには関係ない。他人と競うようなものが今のあなたにはなにもないでしょ。あなたが他人と競っていても、相手は何とも思っていないのよ。自分本位の気持ちで、勝手に他人と競うような生き方はやめなさい。競うなら今の自分と競いなさい。親や他人の好意を期待して生きるまねはやめなさい。人に寄りかかるのではなく、寄り添うような生き方をしなさい。あなたを見ていると虚しくなってくる。私はあなた達の奴隷でも無ければ使用人でも無い。使い捨てカイロでも無い。ふざけないで。でもそれも今日で終わり。今日が最後だと思ってね。私は今日限り、家族とは一切縁を切ります。二度と援助はしない。さよなら」  彼女はきっぱりと絶縁を言い渡した。妹は身動きひとつせず緘口(かんこう)した。男たちは妹のそばで呆然(ぼうぜん)(たたず)んでいた。  彼女は妹から視線を外し、足早(あしばや)になってお店をあとにした。
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