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五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」26
彼女はしばらく押し黙っていたが、それもそうねと納得してくれた。神崎さんへの連絡は私からしてほしいと頼まれた、私は彼女の携帯電話で神崎さんに電話をした。神崎さんは私の声を聞いて、驚いていた。とてもひどいトラブルに巻き込まれたから、今すぐ彼女の部屋に来てほしいと頼んだ。神崎さんはすぐに行くから待ってて、と言い残して、タクシーで駆けつけてくれた。
私が今日の出来事を説明をした。
神崎さんが深刻な表情でため息のような深く長い息を吐き出した。
「しかし、悪戯にしても、風俗的なイメージで彼女を侮辱して貶めようとするなんて、悪意や悪質の範疇を超えている。ほんとに酷い事をするな。これはもう犯罪だよ。でも一体誰がこんな事を企んだんだ。絶対に許せない」
普段、おおらかな彼が、感情を露わにして怒る姿を見せた。それだけ彼女を愛している証だ。
彼女は男三人に取り囲まれた恐怖を打ち明けた。
「自分から誘っておいて、バカにするな」と凄まれたらしい。
私が近づくと男たちの威圧感はトーンダウンしたらしい。
「どうしてそのことを私に話さなかったの、相手が相手なら、逆ギレして刺されてもおかしくはないのよ」
私は不安を口にした。
昨今の事件を考えれば、あり得ない話ではないと思う。身に覚えになくても、とばっちりで命の危険にさらされるなんて、もっての外だ。最悪のケースはさけたい。
私自身、取り囲まれた彼女を見て、恐ろしさから身動きができなかった。情けないと思いながらも、突発的な恐怖には為す術もなく、時間が停止してしまうものなのだろう。
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