五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」28

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五 「人と人とがふれあえば、情ってもんが生まれるんだよ」28

 私たちは昨日買った食べ物で一日を過ごした。  私は何気なさを装って同僚に探りをいれた。 「体調も回復してきました。やっと起き上がれるまでになりましたが、頭だけが活発になり、一人でいる寂しさが増してきたりして、今日、職場はどうですか」  ちょっとわざとらしいかもしれないと思いつつ、メールを送信した。十五分でメールが返信される。  タイトルを見て、どきっした。「事件発生」、内容を読んでみる。  一行目からストレートな非難が書き込まれていた。 「企画総務課の三田祥子さん。風俗業でアルバイト、または男あさりの事実発覚!」そのあと、追加説明が続く。「誘ってください」、「夜のお伴に」、「Hな人、大歓迎」、といった内容の言葉が並べられ、どう見ても会社で勤務しているときの写真だと思えるものが添付されていた。  でも、変なのだ。自分でアップしたなら、自撮(じど)りした写真が添付されるはずだ。  なのに、隠し撮りされたような構図で彼女が写っているのだ。 「それで、今、会社ではどうなっているの」 「彼女は本日休暇を取っているらしい。噂は本当かも。実態がばれて、恥ずかしさのあまり休んでいるのでしょ。人は見かけによらない。とか、そうとうのたまだな。とか、男性職員が言ってました。誰かはわかりませんが、またあの女か、と上の人が怒っていたという噂も聞きました。もう、くびじゃないですか」  私はメールを閉じて思案した。神崎さんに連絡を取ってみようか。いや、神崎さんが帰ってくるまで待つ方がいい。詳しい状況がまだつかめていない。今、行動に移すのは軽率すぎる。もっと事態を把握してからでないと動いてはいけない。気持ちばかり焦り、じりじりした時間を過ごすのは疲れが倍増する。でも今は時間を待つしかないのだ。
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