一 「今のあなたに、彼女を受け入れる覚悟と勇気がありますか」18

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一 「今のあなたに、彼女を受け入れる覚悟と勇気がありますか」18

 彼女は、家族に携帯電話を持っていることを伝えていない。  彼女の気持ちはわかる。母親であっても、お金を無心することしか言わない人に、いつでも連絡を取れるようなことはしたくないだろう。  彼女は、親から金づる程度にしか思われていないんだ。  初めて彼女と話をしたとき、「仕送りなど大変なんですね」と私が言えば、「それだけのことですから」と彼女は言った。  あのときは仕送りをしているだけで、ほめてもらうようなことではない。と彼女が謙遜しているのだと私は受け取った。  でも、そうじゃない。家族愛や親への思いではなく、家族とのつながりはお金だけ。ただそれだけの関係だと言いたかったのではないか。目の前の親の態度を観て、こんな発言を聞いていると、彼女はなんて寂しい人なんだろうと感じた。  また、彼女の質素な生活、着飾らない衣服を思い出せば、私には想像もできなかった異形の家族だ。  私はどろどろと(よど)んだたたかりの池から一刻も早くこの身を解放したくなった。  私が家を出るとき、「あの子にもっと仕送りをしてくれるように言ってちょうだい」と母親から再度伝言を頼まれた。  彼女の苦労などまったく報われない言葉が背中にあたった。  彼女が苦労しながらがんばっていたことに対して、家族からは感謝されることもなく、不満とお金をたかる言葉しか口に出さなかった。どんなにがんばっても褒めてもらえない。快い返事はかえってこない。  何のために彼女は。  喪失が渦巻く奥底に吸い込まれるような感情。  栄養分がしおれて、生が枯渇するような感情。  前向きな感情をすべて消し去るような家族観。  私はめまいさえおぼえた。
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