二 「愛しているかと訊かれると」14

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二 「愛しているかと訊かれると」14

 彼女が重くなる私の気持ちを察してか、少し外に出ませんかと誘ってきた。 「近くにコンビニがありますので、お茶菓子になるものでも買いに出かけましょう」  彼女が先に立ち上がった。  私はか細い声で返事をして腰を上げた。  コンビニへ行く途中、 「過去の話を聞いて、暗い気持ちになるのは今すぐ捨ててください。ほら、このとおり、私は生きていますから」  彼女が両腕を広げて私に見せた。  コンビニでスイーツを選ぶとき、どれもこれも目に映るのはおいしそうなものばかりで、私たちは迷った。 「気になるものは全部買って帰りましょう」とうきうき気分で私が言えば、「いえ。どれかひとつを選びましょう」と彼女に注意された。  穴から贅沢がのぞいた瞬間、パカンとモグラ叩きゲームの小槌で頭を叩かれた感じだ。  コンビニの帰り道では、この街でも(さわ)やかな風を感じるときがあると表情をやわらくして彼女が笑った。私は大きく息を吸った。  部屋に戻って、二人でスイーツを食べているとき、突然、彼女が自分の好みを打ち明けた。 「私、おしゃれなテーブルよりも炬燵が好きなんです。家族的な家具に思えて」  私は瞬時に思った返答を飲み込んだ。「独りでも」なんてことを彼女に言ってはいけない。まだ冗談ぽく言える間柄ではない。 「今、私の印象からして、家族的って? とか思ったのではないですか」  図星だ。否定はしたものの引きつった頬を見逃されず、バレバレかもしれない。  ほんとに。と彼女が確かめるように顔を近づける。再度否定はしたが、人は嘘をつくとき、声のトーンが少し上がるものらしい。  私が隠したつもりの動揺を見透かして、ふっと彼女が微かに笑った。
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