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二 「愛しているかと訊かれると」31
今回のバレンタインデーについてはうまくいったが、問題はそれ以前に起こっていた。
お土産騒ぎが今となって、牙をむいてきた。噂は一瞬のうちに増殖して広がることもあれば、ふつふつと煮えたぎりながら力を蓄え、一気に噴火することもある。
ある日、杉田さんが部長に呼び出された。
杉田さんは浮かない顔つきで戻ってきた。
杉田さんの重い表情を見た部下たちが不信がって訊ねた。
「課長、どうしたんですか。部長室に呼ばれてましたよね」
「ああ、やっかいなことに巻き込まれそうだよ」
杉田さんはうんざりした顔つきで曖昧に答えた。
これから噂話の真相が明らかにされると思っていた矢先に、彼女が告白を一時中断した。
私がどうしたのか訊ねると、なにからお話をすればいいのか、実は迷っています。私自身が混乱しています。
私は彼女の気を急かさないように、お茶でも、と一休憩入れることにした。お茶を飲んで、彼女の気持ちに整理がつくまで、椎名先生との想い出はよかったですね。などと話題を変えた。
彼女が明るい表情を取り戻した。
いくらか時間が過ぎて、彼女の気持ちに整理がついた。
さて、これから確信に迫れる話を聞くことができる。現時点での現状を知ってるだけに、真実を知ることが怖い気もする。語る人はもっと怖くて勇気がいるだろう。
私は逃げてはいけない。
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