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三 「君がそこまで言うのなら」1
彼女の清廉潔白な性格は理解できた。何事にも正直に向かい合い、他人に迷惑をかけるくらいなら、自分から距離を保ち、近寄らないように気遣う。
相手が寄り添ってきても、自分の存在が相手に害をなすと考えれば、相手にどう思われても自ら身を引く。
自分の事だけを考えて、他人は二の次と割り切っていない。
助けを求めて相手を引きずり込むようなまねはしない。
彼女は無垢で慈悲の心を持ち合わせている人だ。
自らの感情は表に出さない。
彼女の人間性を考えれば、杉田さんに恋心があっても不思議ではない。
しかし、杉田さんは当時既婚者である。それゆえ、思いを隠し、恋心を押さえ込んで、杉田さんと接していた。
自分の心を打ち明けて楽になるよりも、苦しくても長くそばにいられることを選んだ。
友達以上、恋人未満の関係を保ち続けた。
なのにあのトラブルに巻き込まれて、別れを余儀なくされた。
こんな事になるくらいなら、いっそのこと告白をすればよかったとは思わなかったのだろうか。
杉田さんは、本心では彼女のことをどう思っていたのだろう。
今でも二人はメールを交換し合っていると思う。
最初、三人の元同僚から話を聞いたとき、最近、彼女がメールを気にしていると言った。
二人の間にはなにかあるはずだと想像できる。
あの頃は、杉田さんが結婚をしていたから、彼女は恋する気持ちを隠した。
でも今は違う。
杉田さんはすでに離婚して、一人暮らしの独身者だ。今なら二人は堂々とつきあうことができる。
彼女のためにも杉田さんの本心を知りたい。
杉田さんの気持ちを知りたい。
しかし、今の情報だけで、果たして杉田さんが心の内を話してくれるだろうか。
先日の電話での応対ぶりを想像すれば、彼女と話をしたことを伝えても、心を揺さぶる変化はないだろう。
結論的に難しいと思う。ということであれば、杉田さんをもっと知ってからでないと、本心を語ってくれる気持ちになってくれないだろう。
どうしよう。
彼女のときのように、杉田さんの生い立ちから知る必要がある。
両親の居所はわからない。
杉田さんには祖母がいると資料には書いてあった。
そうだ、先に杉田さんの祖母に会いに行こうと決めた。
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