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三 「君がそこまで言うのなら」11
美智子さんは彼らを素直で良い子たちだと微笑んで言った。
床が壊れた。と言えば、道具を持ってきて修理するやつがいた。
美智子さんは良い大工になれるとほめた。
戸が汚くなってきた。と言えば、ペンキを持ってきてきれいに塗りあげるやつがいた。
美智子さんはペンキ屋さんか看板屋になれると感謝する。
昼飯時、美智子さんの代わりに焼き飯を作るやつがいた。
これはうまいねぇ。あんたは器用だから飲食店関係に進みなと助言する。
最後の友は、力が強くて、美智子さんへの心遣いも忘れない。一番よく話しかけてくる。人懐っこいところがある。しかし、将来についてはなにも考えられないと言った。
あんたは介護士を目指しな。年寄りに優しいからねと勇気づけた。
孫にはなにも言わなかった。
いつか自分人身でなにかやりたいことを見つけ出すまで、美智子さんは待っていた。予感はあった。孫はなにか言いかけては言葉を呑み込んでいた。
「なにか言いたいことがあるなら、はっきり言いな。男だろ」
美智子さんから檄を飛ばされた感じで、杉田さんは自分の思いを打ち明けた。
「ばあちゃん、今更だけど、俺、進学したいんだ。将来のために学をつけたい」
「なら、ちゃんと勉強しな」
「良いのか、ばあちゃん」
「良いも悪いもお前さんの人生だろ。男が決めたことは死にものぐるいでやり通すんだよ。いいね。その覚悟ができているならがんばりな。あたしゃ応援するよ。大事な孫のためだからね」
「ばあちゃん、ありがと」
「塾に行かす金はないけど、参考書くらいなら買ってやるよ」
「サンキュー」
杉田さんは一年浪人して大学に受かった。
他の四人は美智子さん言葉が導きとなり、それぞれの道に進んだ。
「あのときは一安心したよ」と美智子さんが本心を語った。
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