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未送信のメール
愛はどこにいってしまったの
心の奥に愛はありますか?
食事をだしても何も反応なくて
美味しいのか?まずいのか?
それすらわからない
残すことはしないから
不味くはないと信じたいけれど
もちろん、家事のことは一切しなくて
自分の部屋に直行です
家事はいいから、せめて子供だけでも
かまって欲しいのに
あなたと会話が無くなって
5年がたち
娘は小学校を卒業しました
あなたには興味のない事ですね
卒業式も私ひとりで行きました
お友達はお父さんも一緒に喜んでいたわ
家のこと
子供のこと
教育のこと
そしてわたしのこと
わたしのことはもうとっくに諦めました
お前が、お前が、で片付けられ
名前すら呼んでもらえない
わたしの事はいいから、せめて子供だけでも
かまって欲しいけど
いつの間にか.....
どこにでもいる冷めた夫婦になっていた。
もうあなたの事なんか
どうでもよくなってきて
憎しみすら湧かなくなっている
このまま子供も大きくなって
お互い歳をとり
子供も巣立ち
そんなとき
2人きりになって何があるのかな.....
少し想像してみても
どんどんとまたどん底になる
いっそ、いまのうちにひとりになりますか⁈
けれどそんな勇気はありません
(先々ひとりになるため)仕事をしようと
一大決心するが
うんとは言わない…
だめともいわない…
ならばいっそのこと
好きにさせていただきます
食事や家事に文句を言われないよう
ちゃんと致しますから…
文句…?う〜ん…?
あなたの態度は最低でいつも冷めているけれど
言葉で文句は言われたことが無いかもしれない?
そんなことないよね、気のせいよね…
あんな態度の旦那だから
さぞかしわたしには不満だらけなんでしょうよ
何かあれば文句を言いたいに決まっている
無視するなんてよけいに最低よね
ぁぁ…暗くなっちゃう…
いつもの事で慣れてはいても沈んでしまう…
私も仕事をすれば少しは紛れるかしら
もしかしたら、優しい男のひとに
出会ったらなんてね....
少し、わくわくしちゃう⁈
だめ、だめ、ダメ旦那でもわたしは人妻です
明日からわたしも人生変える
変えてしまいたい!
そんなあなたが突然、旅立ってしまった。
なんの前触れもなく、突然の事
仕事が遅くなる時に泊まっていた
会社近くのホテルで倒れていた
出社しないあなたを心配して
部下が迎えにいった時にはすでに
息をしていなかったそうです
死ぬ時も
会社会社で家には何もなかった
慌ただしくお通夜と告別式をおこない
気がつけば遺骨を抱き車に乗っていた
涙ぐむように見えていたかも知れないけれど
実際はドライアイで辛かっただけ
遺骨は
いっその事、義理母が受け取ってくれたらと
強く思ってしまったいけない妻だった
わたしにすれば
一緒に帰る気持ちなんてさらさらなかった
いままでの仕打ちならそう思われて当然でしょ
これからは明るい未来
子供との生活が待っているんだと
地獄の日々から解放されて
ほんとうの幸せを掴むことができると
自宅に戻り主人の遺品を片付けていた
絶命の場所が場所なだけに不審死の疑いで
警察のお世話になっていたので
その警察から遺品を渡された
持病はなかったですかと聞かれたが
何も知らなかったので、ないですと答えた
遺品の
ビジネスバックにはタブレットとか
そう、そう、スマホがあった
この人のスマホといっても
尋ねることも、もちろん覗くこともなかった
もし、愛人でも居てくれたのなら
それはそれで慰謝料たくさん分取って
わたしはわたしの道を進めたかもしれない...
その証拠でもと思ったが
主人は私がそんな事はしない!だろうと
へんな信頼感?自信?が不思議とあった
だから私もそんな事はしなかった
主人からのメールはLINEではなく
いつも普通のメールだった
そのメールも
生きている時は「遅い」「泊まる」
ぐらいしかメールはなかった
食事がいるか、いらないなんてすら
そんな
気遣いメールなんて一切なかった
いつも振り回されて、好き放題されていた
そんな旦那のスマホのメール
メールボックスの下書きに125という数字
未送信なのかしら、こんなにたくさんも
書いている途中なの?
見ていいのかしら、あの世に行ってしまったから
もういいわよね
ごめんなさいね、ちょと見ますよ
どうせ送り忘れた「遅い」とか
「泊まる」ばかりだろうと
ただ、亡くなった日は たしか
『泊まる』のメールはきてたよね
何をこんなにたくさんの未送信があるの?
開いてみよう.....か
『菜津美たぶんもう帰れない』
何がもう帰れないよ、いつも勝手に
ホテルに泊まっているでしょうに
?そうか
もしかしてホテルで亡くなる前にメール送信
しようとしてたの?
このメールが最後だったのかも?
一生帰れないということだったのかしら
次の未送信は
『いつも家に帰れなくてすまん』
帰って来ても邪魔だからちょうど良かった
『菜津美のご飯が食べたい』
嘘ばっかり、いつもしかめっ面で食べていた
『いつも美味しくいただいています
ご馳走様、ありがとう』
聞いたことはなかった言葉です
『絵菜の事をいつも任せてすまん』
絵菜もあなたを望んでいません
『いつも仕事仕事と言って、すべて
家のことは菜津美にしてもらい、すまん』
あやまるのなら、たまには手伝いなさい
『仕事はどうだ?人間関係も大変だろう』
あなたとの関係が大変でした
職場ではイケメンがいるので楽しかったです..
いや何もなかったからね
そんな事は望んでもいなかったから
ごめんなさい、少しだけ期待していました
バカみたい、怒り半分呆れてしまうけど
なみだがいつのまにか出ていました
『今日のメニューは綺麗に撮れたよ』
綺麗に撮れたって?何かしら
写真のフォルダを覗くと
たくさんの写真
これって私の作った晩ごはんじゃないの
それも、手をつける前の写真
いつのまに撮ってたのかしら
用意をしたらすぐ私はシャワーに行ったから
きっとその時ね…
『毎日毎日違うメニューでありがとう』
そうよ、一応、ダメ旦那でもしっかり
主婦してたんだからね
それにしても、写真は家に帰った日は
毎日撮っていたんだね
それと写真のなかには
絵菜の写真もたくさんあった
それも小さい頃から今まで
あなたが忙しくなって
毎晩遅くなってからは寝顔ばかり……
目が覚めたら、どうするつもりだったの
変態って叫ばれてたわょ
『絵菜は素直で可愛いい子に
育ててくれてありがとう』
性格は私ね
悔しいけど顔はあなたに似たの
なみだが止まらなくなっていました
悲しく声をたてて泣いていた
大声で泣き、止まることはなかった
こんなことがメールできるのなら送るなり
言葉に出してくれてたら良かったのに
ほんとうに、不器用だったの?
照れ臭かったの?
何がしたかったのかわからない
けれど
あなたの心がやっとわかった気がする
愛はどこにいってしまったと尋ねたけれど
心の奥に愛があったのね
あなたの温かい愛がスマホに詰まっていた
気づかなかった私がダメ妻ね
未送信のメールは
日常の感謝と気持ちが旦那らしく
短い言葉でつらつらと綴られていました。
『◯月◯日診断は膵臓癌』
うそ、何も言わなかったじゃない
この日も普通に会社に行ってた
...それはフリだったのね
『余命は長くて3ヶ月』
苦しいところを見せたくなかったから
泊まりが多くなっていたのね?
何も聞かされず、黙って逝こうと思っていたの?
そんなの悲し過ぎる、気づかなかった
わたしは一生、後悔してしまう
そんな悲しみを背負わせて
あなたはやっぱりダメ旦那だったの
なぜ、なぜ、1人で逝くことを…望んだの?
『もしホテルで死んだとしても
菜津美が悪いんじゃないから』
そんな事を言われても残された者は
一生自責の念に駆られる
そのような家内と言われ続ける
人からなんと言われても構わないけど
あなたにはそう思われたくはないから
私は後悔し続けて生きいく事になる
死ぬ前のあなたに
どんな言葉を掛けられても…
100を超えるたくさんの未送信
あなたの懺悔や感謝のことば
だけど、送らなければなんの意味もなさない
最後までダメ旦那なんだから
そんなときに
メールの着信音がなった
それはあなたからの写真付きのメールだった…
『最後まで迷惑かけてごめん』
あの頃のままでいてやれなくてごめん
あの頃はどうだったか?幸せだったか』
送られてきた写真は
絵菜の小学校入学式の時の写真
学校の門の前で3人で撮った写真
みんな笑顔で楽しそうだった、あの頃
ほんとうにほんとうに幸せだった
『僕はあの頃も今も幸せでした
菜津美と絵菜がいてくれたから
ずっと幸せでした』
『これが届く頃には僕はこの世にいないけれど
2人には自由に生きて これからは
幸せになって欲しい』
『さようなら、感謝しています
いつも一緒にいてくれてありがとう…』
バカバカバカ バカ旦那
最後はなみだでよく読めませんでした
わたしはメール返信しました
『こちらこそ、ありがとう
あなたと過ごした15年は幸せでした』
『これからもずっと一緒に居たいですよ』
あなたのスマホが鳴った
久しぶりにまたあなたと繋がった気がした…
『できるなら帰ってきて欲しい
愛しているから、お願いです』
これは未送信のまま下書きに
そっとしまっておきます
ありがとう、光一さん
また出逢いましょうね、いい旦那さん
愛はどこにも行っていなかった
ずっとみんなの心の中に愛はあります
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